Sunday, September 16, 2007

見かけによらず・・・


先々週の授業で、みんなに私はどのように見えるか、ちょっと聞いてみたことがあったね。何人かの学生から「優しそうに見えるけど、本当は怖くて厳しい先生なんじゃないか」という意見が出たが、これは、実は私にはちょっと意外だった。意外だったのは、見かけとはずいぶん違うのではないかという感想ではなく、私が優しそうに見えるという感想の方である。「へー、そうか。俺って優しそうに見えるのか」となんだかびっくりしてしまったのである。これまで、自分自身、優しそうに見えるかどうかなど、考えたことはなかったからだ。まあ、「いやみにみえる」とか「なんか、けちな感じがする」などと思われるよりはよっぽどいい。講師としては親しみやすいというのは大切なことだ。でも、「本当は厳しくて怖いのかもしれない」というのはどう考えればよいのだろう。みんな、私のどんなところを見て「本当は怖いかもしれない」と思ったのだろうか。私の何が、そう感じさせるのだろうか。あの日、授業の後、いろいろ考えたりした。

私はこの大学に来る前、ミネソタ大学の大学院で3年勉強した。大学のそばにアパートを借りて一人で住んだのだが、一緒にTAの仕事をしていた仲間がよく訪ねてた。ジョギングの途中に下から声をかけてくる者や、そこまで来たからちょっと上がらせろという者などが突然やってきたりした。これといって約束をしたというわけではないのだが、みんな「ちょっといいかなあ」という感じでやって来た。そして、私の部屋に入ると、みな一様に、「きれいにしてるんだねぇ」と言ってくれるのだった。正直自分では特に気を遣ってきれいにしているつもりはなく、まあ、性分として、部屋を散らかさないだけだと思うのだが、「きれいにしてるねぇ」と言ってもらえると、悪い気はしない。人のいい私は、「そう。今コーヒーを入れるね。こんなお菓子もあるんだけど、どう?」などと、いそいそサービスをしていたように思う。だが、ある時、ふと気づいた。部屋にやって来る友人達は、一様に「きれいにしているんだねぇ」と言ってくれるのだが、それは、褒めているというよりは、心底意外に思っているようなのだ。つまり私の部屋が、彼らの「きれいじゃないはずだ」という予想に反して、きれいであった事実に驚いているようなのだ。私はだらしなく見えるというわけか?私は「見かけに反して、部屋をきれいにしているやつ」なのか?私は、特に親しく行き来していた友人にこのあたりのことを尋ねてみた。すると彼は、「正直、ひろさん(彼は私の下の名前をとってそう呼ぶ)の部屋が汚かったとしても、意外な感じはしないね」と言うではないか。私は、私のどんなところが、「部屋が汚くてもびっくりしない」か聞いてみたが、彼は説明できないと言った。ただそう思うだけだと。

まあ、人の印象なんて説明の出来るものではないのだろう。わざわざ、上の例を持ち出すまでもなく、「ただ、なんとなくそう思っちゃったんだから仕方がない」という程度のものなのだろう。深く考えても仕方がない。さてさて、皆さんの私の第一印象「優しそうに見えて、本当は厳しくて怖い」というのは当たっているのだろうか。1年間の授業の後で判定してみてください。