Wednesday, November 28, 2007

対決

今日は、皆さん。今度の話の部分が山場だから、随分長くなってしまいました。すみません。


車から出て、トレバーと謎さんが亜中近東言語文学のビルへ走っていった。「一人一人でフリードマンを探す」と謎さんが言った。「もし、お前が見つけたら私を呼べ。一対一で対決するな。お前が倒せないから。」

トレバーにはそのつもり全然なかった。一対一で対決したかったとしても、無意味な命令だった。「探す必要がないと思うよ」とトレバーがゆっくり言った。「もう直ぐそばに立っているから。」

トレバーが言ったとおり、フリードマンはビルの入り口の近くに立ち止っていた。何かを待っているようだった。「ふふふ」とイライラさせる笑い方を前と同じように続けた。「漸く来たんだな。面白いのはここからだ。」

「何のつもりだ」と謎さんが叫んだ。雷雨がもうなくなってしまったから叫ぶ必要はなかったが、多分劇的な対決だったから叫ぶしかなかっただろう。

「これは何か知ってるかい」とフリードマンは分厚い本を持ち上げながら聞いた。「森鴎外の歴史小説だ。これを使うつもりだ。」

「それに何の力があるかい。」今度叫んだのは謎さんではなくてトレバーだった。その会話に参加するつもりはなかったが、マーカス先生の授業のためにその歴史小説を読んだことがあったから好奇心が強すぎた。

「ふふふ。」毎度フリードマンがそういう風に笑って、トレバーは段々そいつの顔をぶっ飛ばしたくなった。謎さんもそうかもしれないが。「この小説を書いた欧外の目標知ってるかい。歴史と小説の境を取り壊したかった。そのつもりでこの小説を書いた時にこれは歴史だと思ってた。でも、何のように書いたか、何思ってたかにもかかわらず、結局は作り話だった。作者の素晴らしい創造性によって、歴史でもあって作り話でもあった。鴎外が思わずにこの小説で歴史を書き直してた。だからこの本、この言葉に歴史を創造する力がある。生憎だが、歴史をそのままに書きたかった森鴎外が俺に歴史を変える物を与えた。」

その長い説明はトレバーに一言も通じなかった。ただ一つの事分かった。アニメなどに、そういう風に素晴らしいという言葉を使う人はほとんどいつも悪人だ。フリードマンはもうトレバーを誘拐しようとしたから悪人だという証拠はいらなかったとも言えるが、素晴らしいという言葉で確認した。

「説明してくれてありがとうね」と謎さんは皮肉な声で言った。それからニヤニヤしながら、「そして随分時間を無駄にした事にも感謝したい。そうしなかったらこれを書くチャンスはなかったね。倒れる。」

「ふふふ。」言うまでも無い事だが、フリードマンは倒れなかった。「この本を持つ限り、歴史を制御するのは俺だ。その簡単な技は何もしない。」全然平気で本のページを捲った。「何のように歴史を変えようかな。さぁ。天災か。」

「また雷雨か」とトレバーが呻いて言った。

フリードマンは意地悪な笑みを浮かべた。「いや、それよりもっと面白いのを考え出した。火山。」

ワシントン大学はアメリカの中西部のセントルイスにあったから、勿論火山があるはずは全然ない。でも、言霊の力を段々信じるようになっていたためか、地面が轟き始めることにトレバーは思ったほど驚かなかった。それから立つ事が難しくなって倒れたから、地面がパックリと裂けたことは見なかった。数秒後地面の震えがそんなに激しくなくなって立つ事が出来た時に物凄く熱い不気味に泡立っていた溶岩でいっぱいの噴火口の隣にいた。

「あの~」とトレバーは溶岩を見ながら言った。目が痛くなったが、見ない事が出来なかった。「これに何の価値があるか。」

「試験だ」とフリードマンが答えた。トレバーはよく分からなかったが、フリードマンも少しびくびくしていたかもしれないと思った。「そして、言うまでも無いけど、ここでお前たちが死んじゃう。日本語のイラプションという言葉を思い出す時にね。」その最後の文章はもっと小さい声で言ったから他の人に聞こえて欲しくなかったはずだが、トレバーには聞こえた。

「オイ」と謎さんはトレバーの腕を掴んで言った。「この紙を読め。フリードマンを倒す方法にそれしかない。」

トレバーはまた振動で一寸フラフラしていたから、「何の紙か」と聞いた。

「馬鹿」と謎さんがイライラして答えた。「ここで意味がある紙は一枚しかないだろう。」

突然気がついて、トレバーは持っている紙を顔まで持ち上げた。文字が明らかに見えた。「もう、読める」と小さい声で言った。「でも、読んだらどうなるか分からないと言ったじゃないか。」

謎さんの表情が和らいだ。「いや、もう分かる」と聞こえないほど小さい声で言った。

トレバーにその台詞の含蓄には気がつかなかった。「でも、僕に言葉を読んで力を使う能力がないと言っただろう。」

「そうだね。」謎さんが一瞬ぐらい考えた。「じゃ、一緒に読もう。」

「でも、僕が何の結果出せないから読む必要はまだ分からないけど。」

謎さんが普通の怒っている顔を付けた。「この状況分かるか。時間がない。いつかフリードマンが噴火という言葉を思い出すはずだ。」

その時には叫ばないほうがよかったかもしれない。「そうだったね」とフリードマンが悟ったように言った。「噴火。」

「読め」と謎さんがトレバーの耳に叫んで、二人は一緒に紙に向いて読んだ。

「伝えたい事がもう重過ぎて。このまま潰れちゃいそうです。」

謎さんが紙から目をはなして、疑いを抱く声で「何これ」と聞いた。

こんなに困った紙は結局こうだとトレバーが思った。信じられない。恥ずかしい声で「歌詞だ」と答えた。

「何の歌詞。」

「あの~、アニメのテーマの歌詞。」

謎さんが眉毛を上げた。「それが授業の宿題か。」

「だから何を書いていたか分からなかったと言ったよ。」

いきなり目が丸くなった謎さんが「オイ。見ろ」と言った。

トレバーが振り返って、驚いた。フリードマンが倒れた後に立とうとする姿を見た。潰れたかとトレバーが思った。こんなのにも力があるか。

「続けようか」と謎さんがニヤニヤして提案した。

「言葉に出来ない気持ち多すぎて。届かないよ、あの人まで、近くて遠い距離。」

もう一度世界が震え始めた。しかし今度は地面だけではなく空気も震えているように感じた。そして周りがぼやけたようになって、近いところしか見えなくなった。

「えっと」と謎さんが躊躇って言った。「後で言うチャンスがないと思うから今言っておきたい事があるが。」トレバーからの返事を待たずに話し続けた。「お前が好きだ。」

どうしてこの女がいつもこんな状況でこんな話をしたいかとトレバーが思った。僕の頭の中で、そして今の世の終末みたいなところで。随分落ち着かない気持ちで、「悪いけど、その愛に報いられない。僕は一目ぼれを信じないからね。」

謎さんが優しく微笑んだ。「そう思った。しかしまだ知りたかった。じゃ、これを読みきろう。」

「どこまでも青い空、同じように見てるのに。あなたには曇り空、見えてる気がしちゃう。」

あたりが突然暗くなった。トレバーにはその紙と謎さんの顔が見えたが、それ以外世界が黒かった。なんとなくトレバーは紙を読んだ後に謎さんがなくなるかもしれないということを心配し始めた。どうしてか分からなかったが、きっとそうなると思った。言ったとおりに謎さんと恋に落ちていなかったが、なくなるのは悲惨だと思った。この気持ちをどう言えばいいか分からなかったから、ただ「あの~。そろそろ本名教えてもらえるか」と聞いた。

謎さんは躊躇した。「アレ。。。アレ。。。」

「あれ。何。どこ」とトレバーは言った。フリードマンがまた襲う事を恐れてどこも見たが、やはり何も見えなかった。謎さんが何を指摘したいか分からなかったから読むしかないと思って続けた。

「グルグル回る。グルグル回る。グルグル回る。グルグル回る。」頭が回っているような感じがして、読む事に集中する事が難しくなったが、頑張って読み続けた。「フラフラな振りしてあなたの胸に飛び込みたい。」読めば読むほど謎さんの声が小さくなった。「グルグル回る。グルグル回る。グルグル回る。グルグル回る。」

トレバーは大変むかむかして吐き出しちゃうだろうと思った。そこでもう続けないと思って、諦めた。しかし、その瞬間に、フリードマンの声が聞こえた。「噴~

読め」と謎さんが必死に叫んだ。

「ふわふわに、浮かぶ私今日も、一人~」

そこで行が終わらなかったが、トレバーがあまりにも驚いて止めなければ行けなかった。周りが白くなっていた。全部が消されていた。謎さんもいなかった。フリードマンもいなかった。火山もなかった。トレバーは一人だった。極めて空っぽの感じがした。静けさを破るために最後まで読みきった。

「雲の上。」

頭の中が濃霧のような物に満たされて、トレバーは雲に乗ってどこかへ漂い去るように意識を失った。



続きを楽しみにしてください。来週は結末。。。かな。