Wednesday, October 3, 2007

悪の顔

今日は、皆さん。話の続きです。


「フリードマン君か。」

「オッス。」

二年生の時からの知り合いのフリードマン君だった。大きくて、眼鏡をかけて、いつも笑いかけていたフリードマン君。最初に目立つ特徴は髪の毛が完全に剃られていたが、凄いコントロール出来ない藪のような髭が生えていた。その顔を見て「どうした」と聞く人がいる時、いつも瞬かずに「重力だ」と答えた。間違いない。フリードマン君だった。

わけが分かんない事ばっかり起こってる、今日とトレバーが思った。「どうしてここに」と砕けたように聞いた。「授業がないか。」

「いや」とフリードマン君が答えた。声は限りのない洞窟ほど深かったが、以前と笑いかけ続けた。普通はトレバーはその顔が暢気さを表したと思ったが、その日には少しなんとなく不気味な感じがした。「それより重大な用事がある。」

多分この気持ち悪さは雷雨の所為だけだとトレバーが自信なく思った。「授業より重大な物。有留先生にそんなもん聞かれちゃ駄目だよ。」意外にフリードマン君は全然笑わなかった。だんだんびくびくしてきて、「重大な用事って何だ」と聞いた。

「新しい偉大な力の降臨を迎える。」

しまったとトレバーは思った。そんなのとは関係なければいいのに。「はいはい。手上げだ」と言った。「そのくだらない紙だろう。あの女が持っている。足が凄く速いけど車があるから捕まえられるはずだ。」

実は、謎の女の事は一寸気に入ったが、雷雨から逃げて直ぐうちに帰って寝てこの奇奇怪怪な夢を忘れて欲しかった。そして、単にフリードマン君だから大変な始末にならないだろうと思った。多分その時にトレバーはフリードマン君が数分だけ前に向こう見ずに銃を撃っていた事をもう忘れたが、その支離滅裂な世界に行ってしまって、誰が怠慢を責めるか。

「ふふふ」とフリードマン君が笑った。「それはもう分かったぞ。でも、もうその偉大な力を手に入れたから、女を追う必要がない。」

どういう意味とトレバーは思った。何を手に入れた。俺しか捕まえなかった。。。いや、そうじゃないだろう。「オイ、違うよ。俺は関係ねえ。まあ、その紙に書かれた言葉は俺が書いたけど、何を書いたか全然分かんない。俺は何の力もない。」

「問題ない。」車のドアを開けて、トレバーを中に投げ込んだ。「忘れたら、思い出させる。」

フリードマン君も車に入ってどこかへ運転し始めた。トレバーは本当に逃げたかったが、成功する方法を考え出さなかった。フリードマン君も危険な速度で運転していたから、車から飛び出すのはいいアイデアではなかった。同じ理由でフリードマン君を運転中に驚かして圧倒するのも多分交通事故の原因だけになる。その上、フリードマン君を圧倒する体力はなかったが、トレバーはその角度から問題を見たくなかった。ただ黙って座るしかなかった。

直ぐに車が止まった。今しかないとトレバーが思った。速くドアを開けて車から全速で逃げた。しかし、瞬間後にフリードマン君が待っていた所に戻った。

「ふふふ」とフリードマンが笑った。トレバーはその笑い方を嫌い始めた。「俺を手伝う選択をやっぱり選んだか」と自信強く言った。

「いや」とトレバーはぜいぜい答えた。「今日はもう十分走ったから、限界だ。」

「ふふふ。いずれ俺の派に入る価値分かってくる。」

トレバーは答えたかったが、突然所在が分かった。またワシントン大学の学園にいた。ヴィレジという学生寮の所だった。雷雨の所為で、いつも緑で綺麗な芝生は全て汚泥になってしまった。そこを渡ってフリードマン君がトレバーを引きずった。

それが分かってから、トレバーが「あの~、何の為に俺の手伝いが欲しいかまだ説明してないけど」と言った。支離滅裂な世界に説明したくない人が多いらしかった。

「当然だろう。世界の覇を唱えるため。」

いつも劇的な雰囲気を与えて下さる天気はその時に大きい稲妻を出した。しかし、トレバーにとってその劇的さは堪らなくなっていた。「地球を滅ぼすか。世界の覇を唱えるか。このB級映画の事もうヤメロ」と叫んだ。

「ふふふ。まだ言霊の力は信じていないか。示威する必要があるかな。」勿論、その時にも、フリードマン君は笑いかけていた。

「賛成だ」と意外な声が言った。トレバーが急に振り返った。謎の女が帰ってきた。

その女が泥に塗れた芝生にじっくり踏み込んだ。「でも、この子は何回説明しても理解できないみたいだね。」トレバーよりフリードマン君と自然に砕けた会話が出来た。彼女は少し変な行動をしていた、とトレバーが気がついた。止まらず、わけの分からないダンスのように芝生を歩き回していた。防衛に隙間がないようしてるかとトレバーは思った。その上、俺は子供じゃないぞ。

「理解させる方法があるだろう」とフリードマン君は言った。まだ笑いかけたにもかかわらず、相手の女をじっと見詰めて、彼女はどこに行っても目で追った。彼女とは「ふふふ」全然言わなかった。

謎の女が止まった。「そうだね。では、これはどうだろう。倒れる。

最後の言葉には特別な強調があって、自然界の限りを超えたように声が響いた。トレバーは体にも響いたと思ったが、実は地面も震っていた。フリードマン君の目が丸くなって、痛そうな顔をした。「ここで済んだと思っちゃ駄目だよ」と言って、切り出した木のように倒れた。

「勿論それはしない」とその女はそうっと言った。

トレバーは地面を見た。長い間見た。謎の女が「倒」という字を足元で泥になぞった。

「オイ」とその女が言った。「速く逃げよう。」

言葉に力があるかとトレバーは思った。馬鹿馬鹿しいけど、見ての通りその女がフリードマン君を一言だけで倒した。トレバーはまだほとんど何も分からなかったが、変な人にもう一度捕まえられて欲しくなかったから、その女と一緒に行くほうがいいと決めた。

「あの~」とトレバーは女の車に乗りながら言った。「説明は。」

「後で。」



続きを楽しみにしてください。