春でよかったなとトレバーは思った。まだ冬であればその長い距離歩けないはずだからだった。その三番目のアイザック・メンデルの住所に行くのに数時間がかかった。でも、それはトレバーに考える暇を与えた。というより、残念ながら、それはトレバーに考える暇を与えた。そしてその考えの結果は「何やってるんだ、僕」だった。頭の中で言ったか声をかけて叫んだか少し曖昧だ。確かなのはトレバーがこの変わった探検のために数十マイルを歩くことは普通はするはずがないことだと気がついた。
しかし、もっと考えたら、ただ狂っているわけでもないということにも気がついた。アレックサンドラ・メンデルの大切さを違算したとは思わなかった。知るはずがないこと、その謎の女の毛色などが勝手に頭の中に浮かんでいた。時々本当はその人のことは知るけど記憶ははっきり見えないという気持ちがした。僕は洗脳されたかと思った。実は、探していた人はほかのまだ調べていないところよりアイザック・メンデルのところにいる証拠は全然なかったが、そこにいる気分があった。でも、時間が経って、考えすぎだろうと思ってしまって、ただその脳に残った住所まで歩いていった。
覚えていたとおりそのところは住宅であるまいとも言えるところだった。まだこれは本当にいいのかと思って、ビルの名前を呼んだ。
「米国中西部中央言霊研究所。。。っか。冗談だろうな。」
自信なさそうなトレバーがドアまで行ってノックした。呼び鈴はなかったからだ。一分ぐらい経って、ドアが開いた。開けたのは背が低い少し年寄りの男だった。トレバーは本当にいるかどうか分からないような顔で外をゆっくり見ていた。少なくても僕はこんなに狂っていないと自分を慰めながら、トレバーは話しかけた。「すみません。アイザック・メンデルでいらっしゃいましょうか。」
「はい。メンデル所長です。何でしょうか。」
自然的に速く答えたことにトレバーはちょっと吃驚した。なぜかというと、この人はよく客さんを迎えに行くようには全然見えなかったからだ。そのビルも、本当に研究所だと信じることまだ決めていなかったけど、客さんが来るようなビルじゃなかった。でもその人は信じられないほど分かりやすかった。トレバーには変な気持ちがした。「あの~、失礼しますが、アレックサンドラ・メンデルという方ご存知でしょうか。」
その年寄りはトレバーをじっと見詰めた。表情には見覚えの気配があったといえるだろう。「娘のことか。中入っていいよ」と言って、ビルの中に消えた。
トレバーは安心した。ついに見つけたと思った。しかし、嬉しくはなかった。毛色以外にまだアレックサンドラ・メンデルとはどういう人か全然分からなかったから喜ぶべきかどうか分からなかった。ただドキドキしてアイザック・メンデルの後を追った。
ビルの中はちょっと汚くて変な臭いがした。廊下にメンデル所長が立ち止っていた。客がいるとは忘れたように見えたから、トレバーが躊躇ってもう一度話しかけた。「あの~。すみませんが、お娘さん今いらっしゃいますか。」
「あ、あいつはね、行方不明だ。」
トレバーの期待感が腹を立てて頭の中で強い文句を言い始めた。「そうなんですか」とトレバーが自分を抑制しようとしながら答えた。多分、行方不明ということはこの人の所為じゃないとは分かった。でも、数十マイル歩いたのに。
「うん。数週間前からね。」
随分平気な答え方じゃないかとトレバーは思った。僕は、ただ知らない人、いや、多分知らない人はこんなに怒って、父であるこの人は全然気にしていない。どんな親子関係あるかな、この家族。しかし、メンデル所長の冷静さによってか、トレバーは落ち着いて出来るだけアレックサンドラ・メンデルの情報を聞こうと決めた。「あの~、お娘さんはどの仕事をなさっているでしょうか。」
「勿論、私と同じ。副所長だ。」
この人問いただしにくいねとトレバーは思った。その上返事に吃驚した。こんな小さい研究所に所長も副所長も要るか。メンデル所長以外に誰もいる気配はなかった。土曜日だからかと思った。「えっと、すみませんが、それは何の仕事でしょうか。」
「読めないか。外で書いてあるのに。言霊を研究する。」
言霊。聞いたことあるけど意味はっきり覚えていないという気がした。多分日本語の授業の読み物に出ただろう。魔法の言葉に関係があったか。どうしてそういうことは現在アメリカで研究するか。それをもっと詳しく聞きたかったが、気になっていたこともあった。なぜ気になっていたか分からなかったが、くだらないことなのに迷惑になって大変だったから、聞くしかなかった。「所長のいい事は分かります。どうして分かりますか。分からないはず。。。じゃないですか。」言っている間にもとんでもない馬鹿みたいなことだった。
「あ、文語のことか。それは止めた。馬鹿だったから。だって何の力があるか、こんな台詞に」と聞いて、トレバーの顔の前に紙一枚を押し付けた。随分乱れた走り書きだった。トレバーはなんとなく読んだ。
「かささぎの渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにける。」
「へ~。読めるな。」
「ええ」とトレバーは答えた。読めるはずないのにとは言わなかった。「あの、本当にお娘さんの居場所ご存知じゃないでしょうか。」
「よくこういうのするよ。いつか帰ってくる。」
じゃ、もうここにいる価値はないなと思って、「そろそろ行こうと思っております。お邪魔してすみません」と言った。
答え待たずに気持ち悪いビルから逃げた。メンデル所長は長い間の知り合いのように話していたから変な気がした。一度も会っていないとトレバーは自信なく思った。何が起こっているか分かんないと叫びたかった。
突然気がついた。「あ、何でここからうちに帰るか。馬鹿だな、僕。」
自己憐憫に浸るところのトレバーに深い声が聞こえた。「乗せてあげようか。」
続きを楽しみにしてください。残念ながら、来週はワンダフル・ウィークだから、二週間待つしかないですね。
7 comments:
トレバーさん、この書き出しはすごい。本当にうまいよ。思わずうなっちゃったよ。
「言霊」って、懐かしい言葉ですね~。私の好きな俳優である阿部寛と女優の仲間紀恵が主演していた“トリック”と言うドラマの中でも、言葉に宿っている不思議な力という話が多々出てきました。トレバーさんの小説おもしろいです。早く続きが読みたいけど、2週間後か・・・
「随分乱れた走り書きだった。」
げに!
(ニューハード先生にこの物語を見せたら喜ぶかもしれません。)
すみませんが、宣教士の福音を聞いて帰るところです。
言霊って、神道から生まれる言葉ですが?
今 宗教のことをすごく関心を持っています。
今日は疲れて金曜会が終わった後、すぐ寝てしまって、今起きました。トレバーさん面白いですね~^^*トレバーさんの本格的な冒険が研究所からまた始まるようですが、 でも、なんか簡単にミステリが解決できない感じで大変ですね~~
相変わらずすごいですね。続きは後2週間で、残念ですよね。
「ワンダーフル•ウィーク」って面白い名前ですね!
うん、ほんと、この書き出しはすごい! お見事です。
アレックサンドラが行方不明なのが、ちょっと心配だなあ。どこで何をしているのやら。
早くトレバー君とご対面できればいいのに。
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