「フリードマン君か。」
「オッス。」
その後で言うことはなかった。まだ意識を取り戻した直後だったし脳はかろうじて働いていたから上手に会話できなかった。しかし静かな七秒が経過してから頭を起動してフリードマン君の重要さを思い出せた。その月曜日の頃影も形もなくなったようだった。おそらくその月曜日に何があったか知っていた。
トレバーは聞こうとしていたが、フリードマン君がその静けさにうんざりして先に話しかけた。「久しぶりだな。」
「そうだね」とトレバーが答えた。フリードマン君が日常の会話のように話していたからトレバーは直接その月曜日の事を聞くことを躊躇った。いきなりそんな質問を聞けばフリードマン君に自分が狂っていると思われる可能性があったからだった。頭の中の反対する声がもう遅いから狂っているとは思われないようなまねをそろそろいい加減にしろと言ったが、トレバーは聞かなかった。「どこにいた、この間。やっぱりうちに帰ったか。」
フリードマン君が眉毛を上げた。「本当に分からないのかい。お前の頭の中にいた。」トレバーがしばらく唖然のまま何も言わなかったからフリードマン君は「解放してどうも」と続いた。
突然落ちたキーを頭のイグニッションにもう一度入れて回した。疼いていた頭の所為かはっきり思い出せなかったが、確かちょっと前何か馬鹿な行動をしていたのだと思った。そして解放という言葉に心当たりがあった。しかしフリードマン君の言っていたことには筋が全く通っていなかった。「僕の。。。頭の中って。」少し笑いながら「どうやってそこに入っただろう。」
フリードマン君も少しニヤニヤしたが案外ちょっと不気味な笑い方だった。「そうだったね。その日のこと全然覚えていないんだな。でも心配するな。俺はなるべく遅く説明するからお前でもいずれ分かるようになるだろう。入ったんじゃねえよ。お前が俺を入れたんじゃ。頭の中にね。」
トレバーは本当に「その日」について聞きたかったが脳の状態はまだまだだった。そしてこのフリードマン君はただの友達じゃないかもしれないと気がついてもう少し慎重になった。
「あ、今のお前には質問聞くのが大変そうだから次のを俺が答えとく。言霊の力を使って入れたんじゃ。」
そうだったねとトレバーが思った。言霊の力を試そうとしていた。何かが頭を強く叩いて、意識を失って、フリードマン君が現れた。「あの~、言葉だけでそういう力があるとは信じないけどね」とトレバーが言った。
今度フリードマン君が眉毛両方を上げた。「ふざけってんのかい。何回も目の前で見たのに。本当に何回説明しても理解できないな。言ったとおり。」
「いつ僕がそういうことを言った」とトレバーが聞いた。
「お前が言ったんじゃねえよ」とフリードマン君が答えた。しかし、誰が言ったかとも説明しなかったし、教えそうにも見えなかった。
フリードマン君はジョークが好きな人だったからこれは全部冗談だとトレバーは信じたかったが、その不気味な顔で冗談しているとは考えられなかった。「どうしてフリードマン君を頭の中に入れたか。」
「そうだね。」フリードマン君が大きく笑った。「三週間そこにいたのにお前の心理全て分かってるとは言えないけど、多分俺がお前を殺そうとしていたからだろう。」
「僕を殺したいのか」と弱々しい声で聞いた。
「ま、その時にね。」
「じゃ、どうして今僕を殺す前に説明してくれているか。B級映画の悪役か、お前。」
「ふふふ」と笑った。なぜか分からなかったがその「ふふふ」はトレバーに凄い恐怖を感じさせた。「特に説明したいわけじゃねえよな。ただ時間を稼いでいる。」手を上げて「呼」という文字が書かれた紙を見せた。
誰を呼んだかと聞く暇はなかった。後ろから「何が宿っていたか、ついに分かったようだね。」
その深い声の源を探しに振り返って、戸口で高級なスーツを着ていた男が立っていた。「もう一度私の車に乗ってくれないかな。」
続きを楽しみにしてください
6 comments:
言霊の力を使って、トレバーさんの頭に入れるんですか?私もそんな力を持ちたいです。私も入って見たい人が実に多いですので。。。でも、トレバーさんのこんな考え方がすごいね~~ 言霊の力で他に何のことがまた出来るのか、私はその不思議な力の話を待っていますね~ トレバーさん~^^*
フリードマン君って、すごく面白かった。
もし二つの私がいるなら、一つは学校に行って、一つは家に寝るつもりです。
もちろん、寝るのは本物の私です。
「高級なスーツを着ていた男が立っていた」。その男は...先生ですか。
車に乗らないで!
あの時の運転手が戻って来たみたいですね(^.^;)。「呼」という文字が書かれた紙のところで、子供の頃好きなゲームに出てくる召喚獣のことを思い出しました。文字を読むだけで何かを召喚できることや、言葉を言うだけで物の存在をコントロールできるなんて、言霊って本当にスゴイですね!!
現れたのはフリードマン君だったんだ~。
しかもトレバー君の頭の中にいたって!!
恐るべし、言霊力。
でも、トレバー君はその能力を持ちながら、自在に使いこなすことはまだできないんだよね。やっぱりもう一度言霊研究所に行くべきかも!?
現れたのはフリードマン君だったのか。もうそろそろアレクサンダー・メンデルが出てきてもよさそうなのになあ。と期待を裏切り続けるのが、まあトレバーの冒険なわけだからな。
マイケルさん、私は高級なスーツは持っていません。大丈夫ですよ。
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