Thursday, February 28, 2008

解放

「お前に何が宿っているだろう。」

トレバーの頭の中でこの台詞が何日か回り続けていた。ワシントン大学に無事で帰ってきて以来それしかほとんど考えられなかった。ほかに考える対象になるために競争するアイデアはなかった。なぜかというと、トレバーがその何日か授業に行かなかった。

その土曜日の変なイベントの後でトレバーの生活に突然入ってきた不思議なことが尚更気になった。前はこれよりもっと気になるはずがないと思っていたのに。空白な月曜日。アレックサンドラ・メンデル。米国中西部中央言霊研究所。不思議な運転手。それを全部解決しなきゃ狂っちゃうと思うようになっていたが、時々もう狂っちゃったという気がした。

しかし解決する方法はないようだった。誰に聞いてもその月曜日に何の大切なこともなかったと答えられる。大切どころか誰もただ面白いことさえ思い出せなかった。そして唯一のアレックサンドラ・メンデルとの繋がりのアイザック・メンデルは結局何の役にも立たなかった。不思議な運転手は多分何か知っていただろうが、そいつに会う手段もなくて会いたくもなかった。

金曜日の午後、シェーファー君がトレバーがぼんやりしていた部屋に入った。「オッス」と言いよどんだ。

トレバーはシェーファー君とは話したくなかった。土曜日の探検を中途半端諦めたからトレバーが怒っていたわけじゃない。その時のトレバーは誰にも話したくなかった。でも頑固に傍で立っていたシェーファー君とは話さざるを得なかったようだった。「日本語の授業、どう。」

「まあまあだな。」

「先生に何を言ったか。」トレバーが今週授業に来ないから風邪とか流感とか何か先生に言い訳言ってくれと頼んだのだ。

「あ、アフリカ睡眠病と言った。」

トレバーがちょっとイライラした顔でシェーファー君を仰いだ。「お前、もっと信用できる病は考えられなかったのか。」

「いや、一番信用できないと思ったからそれを選んだ。だって、俺が毎日授業に行かなきゃいけないのにお前が平気で一週間サボれるなんてごめんなんだよ。」

「そうだろうな」とトレバーが全然興味ない声で言った。

シェーファー君はまた躊躇った。実は、慰めることはとても苦手だったのだ。ほかの状況であれば一瞬も考えないことだが、トレバーがそんなに異常な行動をしていたから何かを言うしかないと思っていた。「おい、トレバー君。本当に大丈夫なのか。」

シェーファー君からそういう言葉があまりにも以外で嘘を付けようとせずに答えてしまった。「僕を見て、大丈夫だと思うか」と皮肉っぽい声で言った。

「えっと。。。なんか。。。話したいことあるか。」

トレバーは話すことに価値があるだろうと分かったがそれでも話したくなかった。そしてシェーファー君を見て正真正銘彼もそういうことについて全然話したくないように見えた。ただし、シェーファー君までそれほど心配をかけていると分かって意気消沈することを止めると決めた。「いや、自分で立ち直ると思うよ。月曜日授業に行く。有留先生に打っ飛ばされるけどな。」

「絶対」とシェーファー君がニコニコして言った。「今夜、どこかで飲みに行かない。」

「今週の宿題全部終えなきゃ。」

「お前、いつもつまんないな」とシェーファー君が言って部屋から出た。

シェーファー君が行った後でトレバーが笑った。「馬鹿だな、僕」と口に出して言った。「その狂っている人の言葉を考えて一週間を無駄にするなんて。お前に何が宿っているだろうってただ大袈裟なナンセンスだ。言霊を信じる人の言葉を真剣に受け止めたとは恥ずかしいな。を言えば火がどこからともなく現れる。。。はず。。。がない。。。だろう。」

トレバーが言葉を切った理由は「火」を強調して言った瞬間に小さい蝋燭の火のようなものが手のひらで現れた。その手のひらを数秒黙って見た。何の跡も火傷もなかった。想像したかとトレバーが思った。やっぱり狂っちゃった。しかしもし万が一本当に火を創造したとしたら、もう一度実験した。ドキドキして「」と言った。手が電球のように何秒か白熱して元に戻った。

不思議な運転手、もっと尊敬するべきだったかなとトレバーは思った。そしていきなり突飛なアイデアが頭に思い浮かんだ。「お前には何が宿っているだろう。」その台詞を考え込んだ一週間の中に実は笑止千万な説明を考え出した。知らないはずのことを何となく知っていた理由はなくなった記憶の名残があったからじゃないとしたらどうだ。もしかしたら、思い出の名残ではなく。。。頭の中にほかの誰かの意識が宿っているとしたら。。。

ただの馬鹿げたアイデアだと自分を説得できないうちにやってみると決めた。椅子から立ってできるだけ真面目な声で「解放」と言った。

意識を取り戻してトレバーが苦しげに立った。やっぱり言霊の力をむやみに使っちゃう前に言霊研究所の人に話しておくほうがよかったかなと思った。疼いていた頭のために薬を取りに行こうとしたが、邪魔なものに衝突した。目を開いてよく周りを見たら、部屋にもう一人の人がいた。

勿論、シェーファー君じゃなかった。


続きを楽しみにしてください

6 comments:

明君 said...

一番面白いところは「アフリカ睡眠病」などサボる理由についての会話だと思っています。
普通トレバーさんが与える印象は生真面目ですが、この文章のスタイルふさわしくない。

mizube said...

シェーファーさんにこの小説を見せていますか。

Anonymous said...

そうだね、欠席の言い訳として「アフリカ睡眠病」は、少しショボ過ぎますね(^.^)…でも、シェーファー君は嫉妬心からだけでなく、きっとトレバーさんのことを心配してくれているのでは?

まぁ、どちらにせよトレバーさんは超能力的な言霊の力を持っているから後でシェーファー君に「次の授業時は、もっともらしい病名を先生に伝えなさい」と命令したら何とかなるような気がします。

解放後に見えるようになった人物も気になりますね。どうやら、丁度その時こっそり入って来た泥棒ではなさそうですね…今後どのような展開が繰り広げられるのか、私のワクワク度は135%です。

Sohyun Chun said...

本当に部屋にいる人は、誰でしょうか?また、変な人に会うのですか?超能力を持った新しい人物かな。。。

あみのっち said...

おお、ついにトレバーくんが言霊使いになりましたね!
「解放」と言った後に部屋に立っていた人物って誰かなあ。これまで登場したうちの誰か、だよね。運転手か……? 気になる!

Aridome said...

アフリカの眠り病って、ツェツェバエによって伝染する病気だったよね。なんか、シェーファーさんなら言いそうだなあと思っておかしかったよ。まあ、そんなことをシェーファーさんに聞いたら、シェーファーさんもぶっ飛ばしただろうな。

「解放」という言葉とともにそこに現れたのはアレクサンドラ・メンデルかなあ。逃げ場を失った彼女がトレバーの中に一時避難していたんだけど、頃合いを見て「解放」と言わせたとか。まあな、私が思いつく程度のことだからな、多分違うんだろうな。これを読んだトレバーさんが、「先生、甘いな」て言うんだろうな。